『宝石の国』1巻感想 博物学的世界に魅せられる
twitterでおすすめしていただいた『宝石の国』1巻を読了。
不死の身体を持つ宝石28人と、宝石たちを装飾品にしようと襲ってくる月人の戦いを描くアクションバトルファンタジー!
という前情報で戦争or生存競争物と思ってたら
「シリアスな笑いで覚える博物学の教科書」だった。
市川春子最新作、『宝石の国』1巻発売記念フルアニメーションPV - YouTube
PVのカラフルな子達+僧侶が宝石勢。仏像を思わせる集団が月人です。
最近の月関係は古代中国系よりもインド系のデザインがトレンドなのでしょうか?
以下、作品の魅力を二点に絞って綴ります。
博物学的な知識の有効活用
作中の宝石を一言で説明すると、宝石の身体を持つ人型の生命体。
種類に応じた名前と性質を持っており、身体が割れたり砕けたりしても破片さえ集めれば人型に戻ります。
一例として、シンシャ(元ネタは辰砂)というキャラクターについて説明しましょう。
彼(性別の概念があるのかは不明)は硬度2と非常に割れやすい代わりに、身体から無尽蔵に毒液を出す力を持つため、月人との戦闘における能力は非常に高い宝石です。
宝石の性質は、能力的な設定だけでなくキャラクター性にも生かされています。
シンシャの場合は、毒液を完全には制御できないため、他の宝石たちを傷つけてしまわないよう距離を置いているという形で表現されていますね。
彼ら宝石たちの性質やその他博物学に関する情報が台詞に取り入れられており、
ストーリーを読み進めることで自然と知識に触れることができます。
宝石たちの性格から生まれるシリアスと笑い
作中には、自分の持つ性質に思い悩む宝石たちも登場します。
彼らが思いを吐露するシーンでの台詞は、
人間である読者にも通じる核心を突いたものであり心を抉られます。
また、個性豊かな宝石たちのやりとりも魅力の一つ。月人との戦いを主軸としつつもシリアス一辺倒ではなく、真面目な話のシーンであるはずが少々ギャグっぽく(その逆も然り)見えたりもします。
自然に存在する物質とキャラクターの精神の両方に関して
豊富な情報量が詰め込まれた一冊でした。
博物学(自然科学)的な話が好き・興味がある方、人型だけど人間ではない種族が好きな方、キャラクター同士の関係性に惹かれる方等に『宝石の国』はぜひおすすめしたい作品です。